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「小さなひしゃく」亭・ロビー

三月やよい個人創作漫画サークルのブログ。 漫画からイラストから、園芸から料理やなんかまで、無軌道な創作の記録(汗)。

「あの頃おれは部長刑事だった」改

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「あの頃おれは部長刑事だった」改

※3/31 「The Lamorna Wink」つづり訂正。大変申し訳ありません(手もとにあってなぜ間違うか私…)
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小説パロディ関係のものを描くときは、専用のノートにアイディアとか描いておいてます。

で、このたび某小説パロディのため久しぶりにノートを引っ張り出したら、古いパロディネームも発掘するハメになりひゃーな今日この頃です。

以前ちょこっとブログにも書いた、マーサ・グライムズのパブ・シリーズ。これのパロディ4コマのネームとかもでてきました。
こんな(←)感じの、マキャルヴィ本部長(脇役)と、その部下ギリー・スウェイト(さらに脇役)が喧嘩しながら、本部長がライブのチケットとったり別の部下をしかったりクリスマスの飾り付けをする漫画(滝汗)…うわあすごいアホだ…こんなん必死で考えてたんだなあ。

で、そんな必死で考えたものがもうひとつ。
以前、某掲示板でグライムズトピを立ち上げたことがありました。ずぼらな私は管理が出来ず落としてしまい、今はありません。あの時書いてくれた皆さんに今でも申し訳ない思いです、ごめんなさい。
で、そのときに話題として考えた「マキャルヴィ本部長・昇進問題」のメモが出てきました。
…レスとかとっておかなかったので、当時の内容で残ってるのこれくらいです。

ということで、記録代わりに文章を起こしなおしてみることに。メモから文章起こすので、当時掲示板に書いたのとは違ってます。

注意)
・文中の引用は全て文春文庫からさせていただきました。タイトルが長いので、タイトル初出以降はパブの名前だけに省略しています(例・「『悶える者を救え』亭の復讐」→『悶える者を救え』)
・「『悶える者を救え』亭の復讐」のラスト近くをばらしてます。
・未訳の「The Lamorna Wink」でも本部長大活躍ですが、原書はもってるものの大部分読めてないため、今回の考察には含めていません。
・当時、他の方の意見もありましたが割愛し、自分の意見のみ文章化してます。
・語れる嬉しさの余り長文です。ごめんなさい。

では、興味のある方は「つづきはこちら」からどうぞ。

デヴォン・コーンウォール方面本部長・ブライアン・マキャルヴィ主任警視。
おそらくファンが多いであろう敏腕ハードボイルド刑事ですが、主任警視になるまでの道のりは、才能のわりに長かったようです。


初登場は6作目「『悶える者を救え』亭の復讐」、物語は20年前から始まります。マキャルヴィは23歳の部長刑事。
この頃すでに、「事あるごとに、彼は昇進した(p15)」「刑事部でてこずっていた他の六つの事件を引き受けて片付けたあとだった(p16)」と、手腕発揮しまくりのようで。部長刑事になるまでもあっという間だったのでしょうね。

ですが、10作目「『古き沈黙』亭のさても面妖」では、8年前の事件を語るとき、こんなことを。
「あの頃おれは部長刑事だった(p57)」
…あれ? 8年前も部長刑事だったの?

その後「部長刑事であったときから、マキャルヴィは署内でももっとも優秀な警官として知られていた(p57)」なんて描写があるので、優秀だったようです。
20年前に部長刑事。
『悶える者を救え』から『古き沈黙』までの時間差は断言できません(調べてみたが所々矛盾が解決できず)が、たぶん開きは3年くらいかと。
で、8年前にも部長刑事。
…ちょっと長すぎませんか部長刑事時代。


作者の設定ミスは除外して、理由を考えてみます。
たとえば昔の上司がレイサーだった(笑)とか、優秀すぎて周りが彼の地位の低さを忘れていたとか、色々考えられますが、自分で一番有力と思ったのはこれ。

「ローズ・マルヴァニー事件を解決できなかった自分が許せなかったので、自ら昇進を拒否した。」


野心は特にないらしいです(「おれがそんなに野心のある人間に見えるか(『悶える者を救え』p70)」)。でも、万年ヒラでもいいというわけでもないらしいです(同ページで、警察本部長に「いつかはなるだろう」なんて答えてる)。

上司の仕事がいやだった、と言うこともなさそうです。
「方面本部長となった今でも、彼はためらわず下っ端警官の仕事をする。ジュリーは彼が交通違反のチケットを切っているところを見たことがある。(『古き沈黙』p57)」
「マキャルヴィが警官の仕事を楽しんでいることはジュリーにもよくわかっていた。彼にとって可能性は無限にあるのだ。(同p267)」
…たとえ署長になったって、この人は交通違反取締ると思います(笑)。


「マキャルヴィは事件を解決することができなかった。そして彼はその自分を許せなかった。(『悶える者を救え』p19)」

優秀ゆえ、この人は自分にとても厳しいと思います。同p300で、自分がテレサ・マルヴァーニーのことを調べるのを忘れていたというのをジュリーに「われわれみんな、忘れていたんですよ」と訂正されたりしてます。
こんな感じの会話は8作目「『独り残った先駆け馬丁』亭の密会」でもあります(p268)。マキャルヴィが自分独りのミスと思ってることは、みんなのミスだったり、知らない情報があったりしたからだとジュリーが客観的に訂正してくれます。
いい友人だなあジュリー。

ということは逆に、訂正しないと「自分のミス」と思い続けているのではないかと。
ギリー・スウェイトのようなズケズケものを言う(褒めてます)部下が来たのも最近のことでしょう。ジュリーのように、あなただけの責任ではないと言ってくれるような上司や同僚が、彼の周りにいたでしょうか。

だから、己の仕事っぷりの結果でもある昇進を受け入れられなかったのではないかと。
それがヘマした自分への罰なのではないかと(仕事は山盛り。立ち止まって悔やむ暇あったら事件を解決するだろうし)。
許せなかったミスを受け入れるまでに15年近くかかったのではないかと。
いかがでしょうか。


そして、その後再び「昇進拒否」の気配が。
『悶える者を救え』でいつかは警察署長になるだろうと言ってた人が、ジュリー警視とこんな会話を。

「どうしてまだ署長になってないんです、マキャルヴィ?」
「こいつはまいった」とマキャルヴィは言ったが、その調子に自嘲はなかった。(『独り残った先駆け馬丁』p77)

その後『古き沈黙』でも、「『レインボウズ・エンド』亭の大いなる幻影」でも、方面本部長・主任警視のまま。
『悶える者を救え』で、モリー・シンガー=メアリ・マルヴァニーを救えなかったことが、再び彼に昇進をためらわせているのでは…と思うとなんだか…まあ私が勝手に思ってるだけなんですが、なんだかなあ。


…というわけで、マキャルヴィ本部長の昇進問題は、彼の「部屋でもコート着たまま問題」と同じくらい深遠なことなのではないかと思うのです。


思いのほか長くなりました。掲示板ではこんなに長くなかったはずだが(汗)。
「The Lamorna Wink」読んだら、また発展させられそうですが、今のところはこれが精一杯。

ここまで読んでくださったかた、ありがとうございます。
推敲したものの、だいぶ読みずらく偏った文章ではと思います。勘違いや間違いなどありましたら、お教えいただけると嬉しいです。

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三月やよい
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女性
自己紹介:
行動がついていかない春生まれ。
北海道出身。結婚後福島県→宮城県。
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